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  • 執筆者の写真Ken Sugizaki

【サリバ離脱データから探る】アーセナルが22-23シーズンに急失速した要因

19年振りのプレミアリーグ優勝へ期待の高まった2022-2023シーズンのアーセナル。


一時は248日間、トップで過ごし、グーナー(アーセナルファン)を楽しませるには充分過ぎるシーズンではあったが、結果的には終盤で急失速し、タイトルを逃すこととなった。


シーズン前の期待値と比べると申し分の無いシーズンとも評せるかもしれないが、それでもやはり終盤の結果には悔いが残ってしまった。


アーセナルが急失速した要因はなぜか分析したところ、サリバの離脱が大きいのではないかと結論付けた。(サリバが離脱した試合は、2023年3月17日、UEFAヨーロッパリーグ決勝トーナメント・ラウンド16 第2戦アーセナルvsスポルティング戦)



そこで今回は、2022-2023シーズンのアーセナルを振り返る上で避けては通れない終盤に失速した要因に関して、サリバ離脱前後のデータとサリバと周辺の4選手の個人データを比較し客観的に探ってみたい。


※データはすべて【データ提供:Opta by Stats Perform】



サリバ離脱前後の3つのデータ比較


まずはチーム全体のデータに目を向けてみよう。


サリバが離脱した試合が行われたのは3月17日であったため、その前後におけるチーム全体に関するデータを3つ紹介する。










上記はボールを持ち運んだ回数についてのデータだ。


昨季のアーセナルのトピックのひとつとして、オレクサンドル・ジンチェンコの偽SBがあるだろう。


ジンチェンコが保持の際にVO(ボランチ)の位置に入る役割は、端的に言ってしまえばビルドアップの質を求めたものだ。


後方で相手のプレッシャーを剥がして前線へクリーンなボールを届けて得点へ繋げる。


このシンプルだが難易度の高いプレーをアーセナルは昨季磨いてきた結果、前半戦の快進撃と共に、ボールを持ち運ぶ回数もリーグ2位を記録している。


これは、プレッシャーから逃れられた状態でボールを持てている表れでもあるし、ボールを支配して守勢ではなく常に自分達が主導でゲームを動かしていた裏付けにもなり得る。


だが、サリバ離脱後のデータを見ると、その順位は6位まで低下。勝ち点を落としたゲーム数と比例する様にそのデータは悪くなっている。


もちろん、スタイルを変えた訳ではないので、これはネガティブなものと言えるだろう。


ちなみにチーム内でこのボールを持ち運んだ回数の選手間の統計は下記である。






これは”シーズンを通して”の統計である。


上述の様に、シーズン終盤戦を欠場したにも関わらずサリバが5番目にボールを持ち運んでおり、彼の不在が殊、ボールを持ち運ぶというプレー及びデータに影響を与えた可能性は高い。




続いては、前方へのパス数について見ていく。






上記データは、シーズンを通してチーム個人を比較した前方パス数についてまとめた統計データだ。ピンと来ない方は、縦パスの数という認識で問題ない。


このデータを見る限り、サリバはシーズンをフルで出場していないにも関わらず、縦へのパス数の数値のデータを残せるプレゼンスがあった事はもはや疑いようがないことが分かる。


続いて紹介するのは、前方へのパス数に関して、昨季のプレミアリーグ所属全20チームを比較したデータだ。(上がサリバ離脱前の3月17日のデータ。下がサリバ離脱後の3月18日以降のデータ)







このデータを見ても、サリバの離脱前後で大きく数値が下がった。


前方へのパスは、ビルドアップにおいてはいわばゴールのようなものであると表現できる。前方へのパスによって、ゴールに近い味方へボールを預ける事にもなり、局面は加速する。


相手は守備時の体のベクトルを変えなければいけない状況に陥る場合や、マークしきれていない相手を生み出すことに繋がるかもしれない。


いずれにしろ、この前方へのパスをしている側のチームは、有利な状況で試合を支配できる。


そして、サリバ離脱前は縦パスがリーグ内で3番目に多かったアーセナルは、徐々に数値が低下していった。




最後は、チャンス数に関しても着目した。







ボールを持ち運んだ回数とチャンス数のデータを見ても分かる様に、アーセナルは個々の局面で、相手を困難に陥れる回数がサリバの離脱前後で減少していた。


当然の様に、チャンス数もその前後で減少。ひいては、それが勝ち点を落とす事に繋がったと言える。


そして、上記のデータから更に言えるのは、“サリバの穴埋めができなかった”という点だ。


彼と同等とまではいかなくても、近しいスタッツを残せる代役が居れば、トロフィーを逃すことはなかっただろう。


アーセナルと他チームを比較し、CBの選手層の薄さで優勝の行方が決したというのはやはり悔やまれる。


「チームとして上手くビルドアップをしてボールを持ち運び、前方へパスを送る」


そしてそれがチャンスになる。そういった個々のシーンがチームとして減少してしまったのが、シビアに結果へと繋がってしまった。


広いコートでやっているはずのフットボールは、実はディテールの積み重ねであると、これらのデータを見て感じる。




サリバ周辺の4選手の個人データの比較


続いては、当記事で主軸としているサリバではなく、サリバの周辺にいたアーセナルの選手個人にフォーカスしてみる。


昨季CBとして出場したサリバや ロブ・ホールディング、 ガブリエル・マガリャンイス、 ヤクブ・キヴィオルの4選手のデータを、サリバが怪我で離脱する前後でのスタッツをそれぞれ比較しながら、今季のアーセナルのCBにフォーカスして評価していく。


尚、各選手で出場時間にばらつきがある為、全てのデータを/90min。(90分平均)で算出した。


#AT サード内へのパス成功率


アーセナルは、攻撃時最終ラインがハーフウェイラインを越えることも多く、全体で押し込む形でプレーをしていた。


それ故、CB→ATサード内への縦パスが頻繁に起こり、この形がひとつアーセナルの攻撃の重要な役割を担っていた。


その事象をパス成功率で見てみると、ガブリエルは前後半平均で約76%を出せたものの、ホールディング、キヴィオルはそれぞれ56、61%とやや見劣る結果となっていた。









続いては、守備のデータとしては最重要項目のひとつである地上戦でのデュエル勝率のデータを紹介する。


離脱前はホールディングが外れ値を出してはいるが、後半戦の55.6%を記録。言い換えれば約2 or 3回に1回のデュエルで負けていると計算できる。この数値は物足りない数字だろう。


前半戦と後半戦を見比べて、全体的に数値が10%近く落ちている点は、昨季のアーセナルの前半戦の力強さと、後半戦の失速具合を語っていると感じる。








守備時には積極的にボールを奪いに行く姿勢を強く見せたのが印象的なアーセナルだったが、タックル数では大きく差が出ていた。


タックルに「行けない」というデータは、主に後半戦の課題となっていたことを示唆している。






また、上記に付随して成功率も見ると、後半戦のタックル数が少ないにも関わらず、成功率はより低いという事実が浮かび上がる。


つまり、「行けていない」ことに加えて「取り切れていない」ことも考えられる。


これは、相手にボールを持たれて守る時間が増えたと解釈できるだろう。






空中戦の勝率は、全体的に平均50%前後となっていたガブリエルが後半戦で13%程上げているのに対して、ホールディングの伸び率はやや物足りない印象を持つ。


キヴィオルは出場時間が短いという点もあるが、今季に向けてもう少し勝率を上げたいところだ。






こうして、守備陣に眼を向けても、サリバの離脱後に実質的に穴埋めをすることになったホールディングとキヴィオルはやはりその代役を充分にこなせたとは言えないデータを残している。


逆に、ガブリエルの孤軍奮闘が際立つ後半戦となった。


彼が居続けたことは、アーセナル守備陣の崩壊が起きなかったひとつの要因とも言えるだろう。



【まとめ】


攻撃においても守備においても、2022-2023シーズンのウィリアム・サリバはアーセナルに大きな影響力をもたらせていた。


それは、当記事で扱ったデータを見る限り各データの数字にも現れており、実際のピッチでのプレーにおいても影響があったと感じざるを得ない。


彼が不在なだけでチームが大きく変わってしまうようだと、プレミアリーグで常にトップレベルに立ち続ける難易度は上がる。


トレブル(3冠)を達成した昨季の最たるライバルであったマンチェスター・シティは、誰が出場しても大きな(減少)変化は生まれない。そういった強固な組織であった。



19年振りのプレミアリーグ優勝という成せなかった目標を再び掲げ、戦力を強化し、アーセナルは今季も闘い続ける。


文:藤原知哉、中本宏樹、山田寛大




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